【読書記録】『マスカレード・イブ』東野圭吾 マスカレード・シリーズ2作目 直美と新田、運命の出会い?(出会ってないけど)

マスカレード・イブ (集英社文庫)

マスカレード・イブ (集英社文庫)

こんにちは、奈良美佐です。
 今回の読書記録は『マスカレード・イブ』東野圭吾さん著です。
 長澤まさみさんと木村拓哉さんで映画化もされている、説明不要の人気シリーズですね。昨日たまたま見たBookoff Online2020年総合ランキングでも10位にランクインしています。

 第一作目の『マスカレード・ホテル』では、超一流ホテルの“ホテルコルテシア東京”で連続殺人の次の犯行は予測されていて、新田刑事がホテル優秀なホテル従業員の山岸尚美の教育の元ホテルマンのふりをして潜入捜査をすることになった。ホテルマンとして優秀な尚美は捜査に対しても“非常に”強力的でその優秀さを見せる。犯人は何者なのか、犯人の狙いは誰なのか、犯人はどのように犯行を行うのか、尚美と新田はどのようにして犯人にたどりつくのか。宿泊したことのない高級ホテルの様子が垣間見えたり、ホテルで働く方たちの考え方など人として参考になることもあり、いろんな意味で楽しめる小説でした。

 さて、今作の『マスカレード・イブ』はそんな二人が出会う前のお話で、3つの短編と1つの中編からなります。

「それぞれの仮面」(短編)尚美がホテルコルテシアに就職して4年、フロントクラークになって間もない頃のお話です。フロントクラークとして初々しい尚美と尚美の元カレが出てきます。相変わらずのミステリーですが、素敵な登場人物にすこしほっこりもします。残念ながら新田はでてきませんが、その分尚美が大活躍です。

「ルーキー登場」(短編)こちらは配属まもない新田の姿がみれますが、マスカレード・ホテルの時とさほど違いを感じません。相変わらず自信家で小説で読む分には格好いいけど、近くにいたらいけすかないんじゃないかな、という感じ。でも、その手腕はさすがです。タイトルも“ルーキー”って言うくらいですしね。いやはや、人間なんて外から見ただけじゃ本当にわからないものですよね。

「仮面と覆面」(短編)こちらも尚美のお話になります。フロントクラークのお仕事にもだいぶん慣れてきた頃でしょうか。それでも、マスカレード・ホテルだったらしないだろうな、というミスがあって、日々成長する尚美を凄いなと思います。「ホテルの従業員はお客様の仮面をはがしてはならない。その従業員もまた仮面をかぶっている」というのはシリーズを通してホテルコルテシアの信念のように描かれていますが、まさかの覆面(笑)。それに振り回されるオタクたちがちょっと滑稽で最後まで笑えます。

「マスカレード・イブ」(中編)表題作ですね。ここでやっと尚美と新田の両方が出てきます。でも直接のからみはないんですよね。新田はホテルにすらこない、というか尚美はオープンしたばかりの“ホテルコルテシア大阪”にヘルプで行っていて、新田は東京ですからね。マスカレード・ホテルを読んだ、もしくは見た方ならご存じだと思いますが、彼らはそこで初めて知り合うので。まだ知り合っていない二人の主人公、どうやって協力しているのか。見ものです。ここで新田と組まされている生活安全課の穂積理沙ちゃんが可愛くていい子で、私のなかなかのお気に入り。でも、今回はヘルプでたまたまあてがわれただけだから、もう出てこないのかな、と思うと残念です。スピンオフとかないかなぁ。

 相変わらず東野圭吾さんは、人間模様を書くのが上手いな、と思うと同時にありふれたトリックもそうとは悟らせない描き方が天才的だな、と感嘆せずにはいられませんでした。そう遠くない将来『マスカレード・ナイト』も読まないと!と思います。

 ちなみにタイトルの”masquerade”には仮面舞踏会や見せかけ・虚構という意味があり、語源はイタリア語の”maschera”(仮面)です。このシリーズにはピッタリの言葉ですね。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

 奈良美佐