【読書記録】『十二国記1 月の影 影の海』小野不由美 大人気シリーズの一作目
十二国記シリーズ 1 月の影 影の海 上下巻セット (新潮文庫)
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「これから始まるんかーい! 笑」
というのが読み終わった時の最初の感想です。
さすが1992年スタートで昨年も続きか発刊された人気シリーズ。
こんにちは。
奈良美佐です。
今回の読書記録は大人気作品『十二国記1 月の影 影の海』小野不由美さん著です。
一年以上前に買っておいてやっと読めました。
12月12日って十二国記の日なんですね。よいきっかけになりました。
とはいえ、読み終わったのは12/13になってしまいましたが。
この本、発売当時の1992年、クラスメートが教室で読んでて「それ面白いの?」ときいて「おもしろいよ」「ふーん」てな会話をしたのに、読まなかったんですよね。というのも当時の私は氷室冴子さんや藤本ひとみさん等のコバルト文庫群にドはまりで、他のものにあまり興味をもっていなかったのです。なんて視野の狭い……。
本当にアホだったなー、と思います。
おんなじラノベなんだから、仲間じゃないか!て今なら思います。
そう、ラノベなんですよね。読んでる途中でラノベであることを忘れるほどしっかりと作りこまれた世界観と重厚感ですがラノベなんです。とっても読みやすいんです。当時の私でも読めたであろうほどに。
<あらすじ>
真面目で誰とでも問題なくやり過ごす女子高生陽子は一か月間奇妙な夢に悩まされていた。そしてある日、学校に奇妙なケイキという男が現れると同時に夢に見た妖獣に襲われ、逃げる為にケイキに連れていかれたのは十二の国から成る異世界だった。逃走中に敵に待ち伏せされ襲われた陽子はケイキとはぐれてしまい、ただ一人で異世界をさまようことになる。道中も妖獣に襲われたり、人に騙されたり、幻影に悩まされたり数々の困難が陽子を襲う。
それまで、普通の生活を送っていた陽子だが、生きるために戦い変わっていく。
なぜ彼女は襲われたのか、なぜ彼女は異世界に連れて来られたのか。
最初に読み始めたときは凄く懐かしい感じがしました。発売された1992年当時、めちゃくちゃラノベを読んでいたのでそれとなんとなく通じるところがあったんですね。それで「これ、あの頃読んでだらドはまりするんだろうなー」と読み進めていきましたが、今でもドはまりしてしまいました。ただ、完成が鈍ったのか、体力がなくなったのか、徹夜して読むほどにははまりませんでした。多分、体力面ですね、認めたくないけど。
それにしても何にこんなに引き込まれたのかな、と自分でもよくわかりませんでした。この小説、私の苦手とするファンタジーなんですよね。1992年当時はファンタジー大好きでしたが、大人になるにつれ、作りこみが足りないファンタジーのご都合主義なところが、どうにも楽しめなくて避けるようになっていました。
でも、この小説は本当によく作りこまれています。
読んでて矛盾を感じません。
陽子は死にかけますが死なないんです。でも、それにもちゃんと納得できる理由が用意されているんです。
そして何よりも惹かれるのは陽子の弱さと、戦うことや葛藤することで少しずつ手に入れた強さ。元々弱かったからこそ、共感できて、言っていることがわかるんです。
物語の中で陽子はこんなことを考えます。
「死にたくないのでは、きっとない。生きたいわけでも多分ない。ただ陽子は諦めたくないのだ」
陽子が直面している現実とは比べ物にならないほどのあまっちょろい世界で生きている私。でも、死ぬ事を考えることが何度もありました。頻度は減りましたが今もあります。その時、死は少しの恐ろしさはあるものの、むしろ優しいものなんです。でも、死なない。まだ生きています。
死ぬのが怖いのももちろんあります。家族を悲しませるのが嫌だという気持ちもあります。でも一番の理由は「まだ諦めたくない」という気持ちがあるんですね。まだ、やり切っていないことが。
死にかけても、自分を失いかけても、自分の汚さ愚かさを目の当たりにしてそれを認めてしまっても、生きる事をあきらめない陽子。励まされました。
そして、こんなセリフもありました。
「裏切られてもいいんだ。裏切った相手が卑怯になるだけで、わたしの何が傷つくわけでもない。裏切って卑怯者になるよりずっといい」
これは折込チラシにも書いてあったものです。
旅の途中で、陽子は信じた人に何度か裏切られ、人を信じることが出来なくなってしまいます。そして、助けてくれた人にも失礼な態度をとってしまったり、あまつさえ見殺しにさえしようとします。その後に、自分を取り戻し、一度は見捨てた人を捜しに行くときのセリフです。
相手に理不尽な事をされると理不尽で返したくなります。自分が損をしたくないからだと思います。でも、それって負の連鎖なんですよね。理不尽な事をする人が得をしない世の中になればいいんですが、なかなかそうはいきません。こういう強さを持ちたいと、憧れはしますが難しいですね。
そして、最初の「これから始まるんかーい 笑」ですが、そう、この「月の影 影の海」はシリーズの序章にすぎないのです。陽子が様々な困難を克服して、新たな一歩を踏み出す、そんなところで終わっています。次を読まずにはいられません。
<おまけ>
雁国に入った陽子はそこで、陽子と同じように日本から流れ着いた男と会います。その男は「安田講堂からでてきた」と言いますが、陽子はなんのことかわかりません。私も分からないので少し調べてみました。
1960年代後半、学生運動が盛んな時代に東京大学の医学部自治会および青年医師連合(卒業生が所属)1968年登録医制度反対などを唱え、に始まる東大紛争を展開し、大学側は「医局員を軟禁状態にして交渉した」と17人の学生の処分を発表したが、その中に明確にその場にいなかった1人が含まれており、このことが学生側の更なる怒りを招き安田講堂の一時占拠となり、最終的には警視庁機動隊がバリケードの撤去等出動するに至った事件。
ちょっと書きたい事が多すぎで冗長になってしまいました。
by 奈良美佐