読書記録『Blue』葉真中顕
正直読む前はあまり期待していなかった。なんとなく表紙のイメージからかな。
だけど、なんか読書メーターで読みたい本の1位になってるし、ということで手に取ってみた。
…読む前の感覚が間違っていたことを思い知らされた。子供を含む複数人を殺した"殺人鬼"の話なのに読み終わった後は1粒だけだけど涙が流れた。
主人公は平成が始まる日に生まれ、平成が終わる日に死んだ戸籍のないblueと呼ばれた1人の男性。
親が違っていたら、関わった大人がどこかで手を差しのべていたら、こんな時代でなかったら。
沢山のifと答えのない問い。
そしてこの物語の中には沢山の「平成」を象徴することが出てくる。
事件:世田谷一家惨殺事件、地下鉄サリン事件等
文化:アムラー、ブルセラショップ、世界に1つだけの花
社会問題:非正規雇用増加、外国人労働者、虐待
等々
このblueも無戸籍児だ。家族に馴染めず家出をし、ある男の愛人になった女性に産み落とされたが出生届は出されなかった。男の死後blueの人生は動き出す。
彼が殺人者になってしまった経緯だけをみてもとても悲しい。でも、もっと悲しいのは彼が死ぬ時。普通に親に愛されて、普通に学校に行っていたら頭もよくて優しい彼は自身は勿論、その家族や友達になった人も幸せにできる人間だったんじゃないかと思った。
By 奈良美佐