【読書記録】『1922』by スティーヴン キング じわじわと襲い来る不安感

こんにちは。

 今回はスティーヴン キングの『1922』です。

 私はキングの作品を読むのは『スタンド バイ ミー』に続いて2作目です。

 

 『スタンド バイ ミー』と同様ジワジワと迫って来る不安感と、少しずつその不安感が解き明かされていくような雰囲気に引き込まれて、そして『スタンド バイ ミー』とは違って結末は何となくそうかなー、とは思っていたけどやっぱりそうだったのか!という部分と、そんな風にある程度予想通りだったにもかかわらず、その想像を超える結末に、その発想や文章力に「さすが!」とは思わずにいられない作品でした。

 

 本自体は約300ページ、そのうちの約250ページが表題作『1922』、残りの約50ページに『公正な取引』。

 

 『1922』は読み終わって、「これ、映画でみたらめっちゃこわそう~」と思っていたら、さすがキングさん、すでに2017年に映画化されていたのですね。

 

 で、これはある男の奥さんがその父親の土地を相続したところから始まる。奥さんは土地を売って都会に行きたい。男は土地にとどまりたい。そんなこんなですったもんだの挙句、男は息子を巻き込んで奥さんを殺すことにしました。

 「ちょ、ネタバレやめてよ!」と思った方、違うんです。

 むしろ、物語はここから始まるのです。

 

 男はどのように息子を巻き込むのか。

 男はどのように奥さんを殺すのか。

 男は奥さん殺しを周囲に隠すか(割とよくある隠し方の気もしますが)

 まだ少年ともいえる息子に、母親殺しを手伝ったという事実はどのような影響が?

 奥さんを殺したことで、男の生活はどのように変わるのか。

 そして男の精神に、人生に、どのような影響を及ぼすのか。

 

 自分の要望を通すために奥さんを殺してしまった男、果たして彼は幸せになれるのか。まあ、普通に考えて人を殺して幸せになれる人がいるとはたとえ物語の中でも思いたくはありません。

 

 この物語でも、彼が幸せを感じられたとはとても思えません。そして、少しずつ色々なものが壊れていきます。その彼や彼に関わる人々を壊していくのは果たして何なのか。その少しずつ、少しずつ、追い詰められていく様子がとりあえず不気味で、怖くて、面白いのです。

 

 結末を読んでぞっとするものの、まだ「え、あれって結局どっちだったの?!」と読者の想像を掻き立てるものになっていて、さすがキングさん(二回目)、巧みな心理描写とストーリーでぐいぐい引き込みます。

 

 そして同時収録の『公正な取引』。

 これは、癌を患ったある男が「延長」を売る奇妙な男に出会うことで物語が始まります。癌を患った男が延長したいのは勿論「寿命」。もちろんただでは手に入らない支払うのはお金と……。

 

 これも怖い!怖いんです。

 ある意味『1922』とは正反対かもしれない話なんですけど怖いんです。

 かなり淡々と物語は進みます。

 何が怖いかは、是非読んでみてください。

 

 最後に……

 スティーブン・キング スゲー!!!

 

 失礼しました。

 

 

『どんぶり委員長』市川ヒロシ 目次

 こんにちは。
 こちらも前回に続きめちゃコミックでよんだグルメ漫画の目次です。
 
 このお話は、「どんぶりなんで下品よ!」とどんぶりを食べた事のないカタブツでちょ~おう真面目な委員長が、ひょんな事からクラスの料理上手な男子生徒吉田の作った親子丼を口にし、どんぶりにハマってしまう、というものです。

 設定的にちょっとムリがあるかなー、と思うところはあるものの、思いもよらない斬新で、だけど美味しそうどんぶりは是非作ってみたいと思って目次を作る事にしました。

 そして、委員長はかなりなめちゃぶりで吉田君にどんぶりを要求しますが、それになんだかんだと応える吉田君と、どんぶりを食べた時の委員長の独特だけどどんぶりのよさがしっかり伝わる感想とツンデレっぷりがとても楽しい漫画です。

第1話「1杯目(1)」
第2話「1杯目(2)」親子丼
第3話「2杯目(1)」こってり&さっぱりのコロッケ二色丼
第4話「2杯目(2)」
第5話「3杯目(1)」パスタを越える絶品ナポリタン丼
第6話「3杯目(2)」
第7話「4杯目(1)」委員長ファーストインパクスペシャル牛丼
第8話「4杯目(2)」
第9話「5杯目(1)」ベーコンミルフィーユ丼
第10話「5杯目(2)」
第11話「6杯目(1)」海鮮丼
第12話「6杯目(2)」
第13話「7杯目(1)」野菜オンリースープあんかけ丼
第14話「7杯目(2)」
第15話「8杯目(1)」勢いで作ってみたもち丼
第16話「8杯目(2)」
第17話「書き下ろし」広島風お好み焼き風丼
第18話「9杯目(1)」疲れをとろうとろっとろの角煮丼
第19話「9杯目(2)」
第20話「10杯目(1)」
第21話「10杯目(2)」オールコンビニ素材の和風チキン南蛮丼
第22話「11杯目(1)」文明開化の香りのするカレーパン丼
第23話「11杯目(2)」
第24話「12杯目(1)」夏だぜ生ハム生卵丼
第25話「12杯目(2)」
第26話「13杯目(1)」モーニング・ザ・洋朝食丼
第27話「13杯目(2)」
第28話「14杯目(1)」
第29話「14杯目(2)」秋ナスはステーキにして委員長だけに食わせろ丼
第30話「15杯目(1)」お値打ちマグロのガーリックマグタマ丼
第31話「15杯目(2)」
第32話「16杯目(1)」サラミトッピングのピザ豆腐丼
第33話「16杯目(2)」
第34話「書き下ろし」魅惑のポテチバター醤油丼
第35話「17杯目(1)」彩り豊かなフレッシュ野菜のアボカド丼
第36話「17杯目(2)」
第37話「18杯目(1)」三位一体パリパリ羽つき餃子丼
第38話「18杯目(2)」
第39話「19杯目(1)」よくばり具材のはなまるう丼
第40話「19杯目(2)」
第41話「20杯目(1)」なんちゃってトムヤムクン
第42話「20杯目(2)」
第43話「21杯目(1)」ピリ辛肉味噌隠れ納豆丼
第44話「21杯目(2)」
第45話「22杯目(1)」吉田家特製紅生姜天丼
第46話「22杯目(2)」
第47話「23杯目(1)」博多ラーメン風ばりうまか丼
第48話「23杯目(2)」
第49話「24杯目(1)」ビギナーズコンビーフハンバーグ丼
第50話「24杯目(2)」
第51話「書き下ろし」
第52話「25杯目(1)」じゃがバターお祭りどーん丼
第53話「25杯目(2)」
第54話「26杯目(1)」燻製づくしの香り高きネオ親子丼
第55話「26杯目(2)」
第56話「27杯目(1)」沖縄の家庭の味チャンプルー丼
第57話「27杯目(2)」

第58話「28杯目(1)」とろっとオアとろーりのカボチャ丼
第59話「28杯目(2)」
第60話「29杯目(1)」タバスコ好き好きすき焼きトマト
第61話「29杯目(2)」
第62話「30杯目(1)」レンチン簡単ローストビーフ風丼
第63話「30杯目(2)」
第64話「31杯目(1)」サプライズカレーマボチ丼
第65話「31杯目(2)」
第66話「最終話(1)」アサリの旨味たっぷりじゅんわり肉まん丼
第67話「最終話(2)」
第68話「書き下ろし」

『侠飯』薩美佑&福澤徹三 目録

 
 こんにちは。

 今回は読書記録、というよりも漫画レシピのメモみたいなものです。

 私は漫画が好きで、中でも読んで作って食べられるグルメものが[大好きです。

 そのなかで、よく作るのが『きのうなにたべた?』よしながふみ、『にがくてあまい小林ユミヲ、そしてこの『侠飯』です。

 どれも、大体家にある材料で(たまに買いにいくけど、コンビーフとか)簡単にできるので重宝してますが、「あれ作りたい!」と思った時に、「どの回にでてた料理だったっけ?」となるので、今回目次的なものを作ってみることにしました。

 このまんが『侠飯』は平凡以下のやる気のないある独り暮らし大学生良太の所に、ある事件がきっかけでヤクザの二人組が住み着いたところからはじまります。そのうちの1人。柳刃さんがもうまさに料理の達人で毎回簡単で美味しそうなご飯を作ってくれるのです。それだけではなく、良太にあらゆる叱咤激励?の言葉を放つのですが、どれもいい言葉かつごもっともな内容で読んでいる私も「頑張らないとな」と思わされます。

 就活に悩む大学生の姿に過去の自分を思い出したり、良太と二人の関係性の変化や大学の友達との友情、そしてまさかの?!と普通に話も面白いので是非読んでみて頂けたら、と思います。


 ちなみに私は漫画は大体「めちゃコミック」で読んでいるので、その話数になります。

第1話「出合い(1)」
第2話「出合い(2)」
第3話「スナック料理(1)」
・米の炊き方
第4話「スナック料理(2)」
・オイルサーディン
・カマバター
・リンゴチーズ
・ネギ飯
第5話「お手軽本気中華(前編)(1)」
第6話「お手軽本気中華(前編)(2)」
第7話「お手軽本気中華(後編)(1)」
・炒飯
・麻婆豆腐
・スープ
・搾菜
第8話「お手軽本気中華(後編)(2)」
第9話「1日は朝メシから(前編)」
第10話「1日は朝メシから(後編)」
・ベーコンエッグ
・バタートースト
・コーンスープ
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第11話「侠の料理はアイディア勝負(前編)」
第12話「侠の料理はアイディア勝負(後編)」
・混ぜカレー
第13話「手間ひまステーキ(前編)」
第14話「手間ひまステーキ(後編)」
・ステーキ
・ポテサラ
第15話「バトル勃発!!」
ベイクドポテト
第16話「効率重視でうまくいく(前編)」
第17話「効率重視でうまくいく(後編)」
・豚ロースの味噌漬け焼き
・大根の塩昆布漬け
・黄身の醤油漬け
第18話「インスタント・イタリアン(前編)」
第19話「インスタント・イタリアン(後編)」
・トマトと卵白のソテー
・エビとブナシメジのアヒージョ
カルボナーラ
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第20話「ホットエージェンシー(前編)」
・海苔玉スープ
・塩豚丼
第21話「ホットエージェンシー(中編)」
・豆苗炒め
・ネギ塩奴
海南鶏飯
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第22話「ホットエージェンシー(後編)」
・酔い覚めスープカレー
第23話「パーティーメニュー(前編)」
第24話「パーティーメニュー(後編)」
ローストポークバルサミコソースがけ
・タルタルペッパーステーキ
・チーズリゾット
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第25話「うま辛キムチ料理(前編)」
・キムチ納豆
・キムチとネギのチヂミ
第26話「うま辛キムチ料理(後編)」
豚キムチサムギョプサル風
第27話「春菜ちゃん、ご乱心!?(前編)」
・めんたいバター釜玉
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第28話「春菜ちゃん、ご乱心!?(後編)」
カニ缶雑炊
第29話「火野さんの刑務所メシ(前編)」
・ジェイルライス
第30話「火野さんの刑務所メシ(後編)」
・味変アイス
第31話「油そばもイメージ」
油そば
第32話「型破りも、柳刃流」
・1口餃子(韓国式)
西紅柿炒蛋
・1口餃子(中国式)
・中国風冷奴
第33話「思いつきも柳刃流」
ナポリタンライス
第34話「海の家でもヤクザ飯(前編)」
第35話「海の家でもヤクザ飯(後編)」
・焼きそば
第36話「美味しく過ごす熱帯夜」
・焼き枝豆
・ネギポン奴
・ハムカツ&キャベツ
第37話「良太の自己分析」
・そうめん(変わりツユ3種)
第38話「なんくるない!?(前編)」
・ドリンクバーでアレンジドリンク
第39話「なんくるない!?(後編)」
タコライス
・ポーク玉子
第40話「極道襲来(前編)」
・卵かけご飯
第41話「極道襲来(後編)」
・冷やしレモン蕎麦
第42話「時代の流れ」
・ポークチャップ
第43話「夏バテをぶっ飛ばせ」
・ニラ玉
・チキン南蛮
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第44話「もやしっ子」
・優作鍋
第45話「アレンジラーメン」
・カレーマヨラーメン
第46話「貧乏人のパスタ」
・ペペロンチーノ
第47話「トーストが大変身!?」
・悪魔のトースト
・ガレット風トースト
お好み焼き風トースト
第48話「ピンチに役立つ柳刃流(前編)」
第49話「ピンチに役立つ柳刃流(後編)」
・玉子スープ
・レバニラ炒め
第50話「安定の柳刃流」
・ちゃんちゃん焼き
・鮭茶漬け
第51話「B級の底力」
・ポテチパン
第52話「ご近所さんはお騒がせ(前編)」
・コーンポタージュスープ
・玉子ハムサンド
第53話「ご近所さんはお騒がせ(後編)」
ネギ塩牛タン焼き
第54話「独立を目指す君に」
・中華風カレー
第55話「甘い文句にご用心」
・チーズの肉トロ
・大人のポテサラ
第56話「秋採用の心得」
・豚の角煮
・煮卵
第57話「無知の良太に予期せぬ料理」
・キノコつくね鍋
第58話「指名手配(前編)(1)」
・醤油バター飯
・ごま塩バター飯
・たらこバター飯
第59話「指名手配(前編)(2)」
第60話「指名手配(後編)」
・豚のしょうが焼きパスタ
第61話「全ての道はローマに通ず」
・餃子ピザ
第62話「追跡(前編)(1)」
・親子丼
第63話「追跡(前編)(2)」
第64話「追跡(後編)(1)」
・プデチゲ
第65話「追跡(後編)(2)」
第66話「大胆にいこう(1)」
・牡蠣とベーコンの醤油バター炒め
・牡蠣とマッシュルームのアヒージョ
第67話「大胆にいこう(2)」
第68話「柳刃流クリスマス(前編)」
・納豆と玉ねぎの卵かけご飯
第69話「柳刃流クリスマス(後編)(1)」
第70話「柳刃流クリスマス(後編)(2)」
・皮酢
・鶏皮せんべい
・照り焼きチキン
第71話「正月料理は贅沢に」
・メロンのプロシュート巻き
・生ウニとイクラの黄身あえ
・和風ローストビーフ
・海鮮シャンパン鍋
第72話「信也の悩み事」
・ベーコン・ストリップ・パンケーキ
第73話「ミニマリスト登場!!(1)」
・明太卵焼き
第74話「ミニマリスト登場!!(2)」
・海苔チーズ板わさ
・塩辛じゃがバター
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第75話「後悔と感動の牛スジ(1)」
第76話「後悔と感動の牛スジ(2)」
・牛スジカレー
第77話「就活戦線異常あり!!(1)」
・ふりかけトースト
・オリーブペッパー味噌汁
・佃煮バタートースト
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第78話「就活戦線異常あり!!(2)」
第79話「覚悟の一次面接」
・カリーヴルスト
・フライドポテト
第80話「食べ物で性格は変わる(1)」
第81話「食べ物で性格は変わる(2)」
・ニンニク肉焼き飯
第82話「出ていく条件」
・ホタテとササミの中華粥
第83話「荒れる夜(1)」
第84話「荒れる夜(2)」
第85話「殴られた夜の肉吸い(1)」
・肉吸いとTKG
第86話「殴られた夜の肉吸い(2)」
第87話「忙しい朝の缶詰め飯(1)」
・サバ缶カレー煮
・コーン玉子サラダ
第88話「忙しい朝の缶詰め飯(2)」
第89話「好きな気持ち」
・鶏ニラ鍋
第90話「ポリスマンカレー」
・ポーチドエッグカレー
第91話「裏切りたくない(1)」
第92話「裏切りたくない(2)」
第93話「決着の夜(前編)(1)」
第94話「決着の夜(前編)(2)」
第95話「決着の夜(後編)(1)」
第96話「決着の夜(後編)(2)」
第97話「飯は冷やに限る」
第98話「どこかで会える(1)」
第99話「どこかで会える(2)」
・カマバター
・リンゴチーズ
・オイルサーディンの缶ごと焼き
 (全てアレンジver)

『きたきた捕物帳』宮部みゆき 新シリーズスタート!

宮部みゆきさんといえば、説明不要の名作家さん。

私も昔から大好きで……といいながら実は時代物は読んだことがなかった。

と、言う訳で私にとっての初宮部時代小説。

以前どこかで「時代物こそ本領発揮」と誰かが書いていた気もするけど記憶違いかもしれない。

 

でも、これを読んで思った。

 

私のしってる宮部さんじゃない!

でもサイコー!!!

 

江戸時代、深川が舞台。

主人公は(多分)捨て子で、岡っ引きの千吉親分に3つの時に拾われた北一君が主人公。

物語の始まりは北一君16歳の時、千吉親分がなんとふぐに中毒って死んでしまったー、てところから。

千吉親分には実子が何人かいる。

拾われっ子の千吉君の運命や如何に?!

 

で、分かりやすい悪役の千吉実子の嫁がいて、千吉親分と中の良かった深川の差配人の富勘、残された千吉親分の盲目の細君おかみさん、などなど、個性豊かなキャラクターによって千吉君のとりあえず、の運命はきまる、が、さっそく問題が、と言うのが第一話「ふぐと福笑い」。私はやったことないけどお正月の定番の遊び「福笑い」。ある家にあった「福笑い」には迷信があったが、それを知らずに子供たちが遊んでしまい……、というちょっぴりホラーなミステリー。

 

そして第二話「双六神隠し」。北一君の住む長屋で子供が行方不明に!一緒にいた子がなにやら訳の分からないことを言っている。これは神隠し?ホラーかミステリーかはたまたそれ以外の何かか?複雑な人間関係の中の悲しさやさしさをほっこりと書き上げる宮部さんはやっぱり天才だと思う。

 

第三話は「だんまり用心棒」。これをよんで「だからきたきた捕物帖かー!」と心の中で声を上げた。北一君の活躍や如何に 笑。

第四話『冥途の花嫁』これはちょっぴりホラーと見せかけたミステリーかな。いや、読みなれた人には全然ホラーじゃないかも。「冥途」なんて書いている割には暗さはない、けどかなり悲しい話だと私は思う。もしかしたらそう思わない人の方が多いかもしれないけど。ただここでは相変わらずおかみさんがきれっきれで格好いいし、初めて北一君も格好いい見せ場が!で終了。

そんな格好いい北一君をチラ見せされたら、続きが早く読みたくなっちゃうじゃないか、という不満に見せかけた期待を胸に植え付けられた。

 

初めての宮部さんの時代小説、ほっこり暖かくて、ちょっぴり切なくて悲しい、でも素敵なお話でした。

そして心に残ったのは第二話でのおかみさんと北一君の会話。

 

北一君「間違えねえようにするには、どうしたらいいでしょう」

おかみさん「――思いやっておやり」

 

うわー、名台詞だよ。

これって、いつの時代、どんな状況でも当てはまる真理じゃないかな。


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きたきた捕物帖

きたきた捕物帖

『下山事件 暗殺者たちの夏』柴田 哲孝 初代国鉄総裁の謎の死、自殺か他殺か。実話を元にした小説

下山事件 暗殺者たちの夏

下山事件 暗殺者たちの夏

恥ずかしながら「戦後最大の謎」ともいわれるこの事件を私は知らなかった。
本小説は実際にあった初代国鉄総裁の死の謎を描いたもので、できる限り事実に近く、登場人物の名前も実名に近い物を使用して描いたという。ただ、小説でしか描けないところがある。

それは、結局今でも謎のままの部分だ。
それを著者の想像力や推理力を駆使しして補い一つの物語として書き上げている。

ページ数は約600、なかなかの長編だ。
だが、一日で読み切ってしまった。
それは、事件が興味深いからというのももちろん、著者の筆力によるところも大きいだろう。
全編を通して目の前で起きているかのようなリアルさがあった。
特に下山氏が失踪してからの捜査の様子、一課と二課の攻防等は息もつかせぬ緊迫感だ。
個人的には法医学が絡むシーンがとても面白かった。

元々この事件を知らなかった私には、読んでいる最中はどこがフィクションでどこがノンフィクションなのかは全く分からなかった。しかし、読み終わったあとには何となく想像がついた。そして更にインターネットで検索をして更に理解が深まった。相次いで発生した「国鉄三大ミステリー事件」の三鷹事件松川事件についても描かれている。

この本はフィクションだが、著者である柴田哲孝氏はノンフィクション『下山事件 最後の証言』も出版されている。是非これも手に取りたい。

簡単に下山事件の概要を簡単にざっくりまとめると、
・1949年、日本を占領する連合国軍(米を中心)指揮下、高インフレに喘ぐ経済の立て直しを図り、その一環として緊縮財政策を実施する。
・6月1日:同日施行された「行政機関職員定員法」に基づき10万人近い人員整理を求められる国鉄の初代総裁に下山定則が就任する。
・7月5日:出勤する為午前8時20分に自宅をでる。あちこち寄った後、三越に車を停め運転手にに「5分で戻る」と言い残し、そのまま消息を絶つ。
・7月6日:午前0時30分過ぎに轢断された遺体が発見される。失踪前の状況、遺体発見現場の状況、法医学的見地等から、自殺とも他殺とも断定できない多くの謎があった。
・12月30日:自殺か他殺か断定できないまま「下山事件特別捜査本部」は解散。
・1946年7月6日:殺人事件である場合の公訴時効が成立。

自殺説・他殺説、それぞれを主張するものにはそれぞれの合理的と思われる理由があった。自殺と断定するには納得のいかない部分が多いが他殺とするにも決めてに欠ける。

個人的には小説を読んだせいか、Wikipediaやら他のページで調べた後も他殺説が有力な気がするけれど、70年以上たった今、進歩した科学で真相を解き明かすことができるのか、又、できたとしてもやろうとしてくれる人間がいるのか、もしくは時間が経ちすぎてすでにそれは無理な事なのか、どちらにしてもなくなった下山氏には失礼かもしれないが非常に興味深い事件である。


『アキちゃん』三木三奈 寄り添わない小説?あなたの周りの"アキちゃん"は?

文學界 (2020年5月号)

文學界 (2020年5月号)

  • 発売日: 2020/04/07
  • メディア: 雑誌

芥川賞候補作。
文學界新人賞受賞作。

"選考会を議論の渦に巻き込んだ"寄り添わない小説""
と、文學界5月号の表紙に書かれている。


「わたしはアキちゃんが嫌いだった」
いきなりのこの一文で始まる。

ちょっと吉本ばななの『TSUGUMI』を思い出した。

でも、主人公のミッカーはただアキちゃんが嫌いなのではなく、いつもいつでもアキちゃんの事が頭から離れない程、大嫌いなのだ。

アキちゃんは嫌なやつだ。
私の職場にも似たヤツがいる。
すぐに彼女の事を思い出した。
かくいう私も、彼女の事が嫌いすぎて頭から追い出すのにいつも苦労している。

ミッカーの気持ちがめちゃくちゃわかる。

何処が寄り添わない小説なんだ?

2人の関係は、アキちゃんは、ミッカーはどうなるのか気になって、テンポのよい文章に、リアルな心理描写に引き込まれて、どんどん読み進んだ。

と、途中から「あれ?」と思うことが少しずつでてくる。そして気づく。"寄り添わない"の意味に。

その意味については、是非本作を読んで考えてみて欲しい。それこそが、また、その事実を明らかにしていく書き方こそが、巧みな子供の心理描写と並ぶ、本作の肝であると思われる。