『アキちゃん』三木三奈 寄り添わない小説?あなたの周りの"アキちゃん"は?

文學界 (2020年5月号)

文學界 (2020年5月号)

  • 発売日: 2020/04/07
  • メディア: 雑誌

芥川賞候補作。
文學界新人賞受賞作。

"選考会を議論の渦に巻き込んだ"寄り添わない小説""
と、文學界5月号の表紙に書かれている。


「わたしはアキちゃんが嫌いだった」
いきなりのこの一文で始まる。

ちょっと吉本ばななの『TSUGUMI』を思い出した。

でも、主人公のミッカーはただアキちゃんが嫌いなのではなく、いつもいつでもアキちゃんの事が頭から離れない程、大嫌いなのだ。

アキちゃんは嫌なやつだ。
私の職場にも似たヤツがいる。
すぐに彼女の事を思い出した。
かくいう私も、彼女の事が嫌いすぎて頭から追い出すのにいつも苦労している。

ミッカーの気持ちがめちゃくちゃわかる。

何処が寄り添わない小説なんだ?

2人の関係は、アキちゃんは、ミッカーはどうなるのか気になって、テンポのよい文章に、リアルな心理描写に引き込まれて、どんどん読み進んだ。

と、途中から「あれ?」と思うことが少しずつでてくる。そして気づく。"寄り添わない"の意味に。

その意味については、是非本作を読んで考えてみて欲しい。それこそが、また、その事実を明らかにしていく書き方こそが、巧みな子供の心理描写と並ぶ、本作の肝であると思われる。